About
PCPは2018年設立とまだ新しい組織ですが、現地での人道支援活動は、メンバーであるエイドワーカーの高遠菜穂子が、2003年から18年以上に渡って継続しています。高遠は、イラク戦争直後から、戦争による被害の大きさを目の当たりしながら、水や食料、生活必需品や住居の提供、医療ミッションなど、現地の人々にとって必要な、様々な人道支援活動を行っていました。緊急支援のフェーズが落ち着くと、現地の人々と共に、復興プロジェクトに力を尽くしていました。
しかし、それらが実を結ぶかに見え始めた2013年末頃から、IS(=イスラム国)の台頭があり、その被害のあまりの悲惨さに絶望しかけ、激しい徒労感に見舞われたと言います。彼女はその当時のことを、「地獄を見たと思っていたけれど、その底に更に深い血みどろの地獄があって、そのふたが開いてしまったと思った」と表現しました。
その絶望の中で、ある現地スタッフの若者が、「この国が味わった最悪の地獄の年月の中で、たったひとつ、ぼくらが得たものがあったとしたら、それは“多様性”だ」と語りました。その言葉に、彼女は小さな希望を見出します。この、“多様性の容認”こそ、長い間、彼女が、この国に最も必要と考えてきた、”報復の連鎖を断ち切る概念“=”平和細胞を育む床“だったからです。
若い世代が多様性の貴重さを認識し始めた今こそ、イラクで世代を超えて受け継がれてきた「報復の連鎖」を断ち切るための新しい平和教育を構築することが求められているのではないか、そう考えていた高遠は、その後、日本で演劇教育に出会います。福島のある高校で、震災と原発事故に関する自分たちの体験やリサーチを基にした演劇創りを見学して衝撃を受け、ひとりひとりの個性、共感力、協力、想像力、コミュニケーション力などを基調とした演劇ワークショップに大きな可能性を感じます。
「これをイラクでやってみたい」
2016年には2名の演劇関係者がイラクを訪れ、高遠の活動に参加協力していく下地ができていきました。そこに、読書や環境問題などの専門家たちが次々に集まって、PCPは動き出しました。
高遠の長年の現地での人道支援の土台の上に、まさに“多様な”分野の人々が集まってできた団体、それがPCPです。
Message
ピースセルプロジェクト(Peace Cell Project 略称、PCP)は、長く紛争の続いたイラクの子どもたちや若者たちに、平和教育とエコロジー(環境保護)などのプログラムを、日本とイラクの共同で行う団体です。
イラク、クルド自治区ドホークを起点とし、移動図書館、絵本・紙芝居製作、学校図書館の設置などの読書キャンペーン、コミュニケーションや演劇のワークショップ、音楽授業、演劇製作などの芸術教育、清掃活動や自然環境保護活動、再生可能エネルギーの推進、地球環境保護の授業といったエコロジー・プログラムを行っています。
What is PCP?
読書・教育・芸術・地球環境などのさまざまな教育プログラムを通して、現地の子どもたちの創造力、表現力、共感力、人権意識などを高め、多様性を認め合い、イラクで世代を超えて受け継がれてきた「報復の連鎖」を断ち切るための、新しく、楽しい平和の学びがイラク全土で行われることを目的とします。
Our Mission
ドホークは、イラク北部にあるクルド自治区です。イラク国内でも、多くのシリア難民や、国内最大数のIDP(国内避難民)を受け入れているほか、社会復帰をしつつある元子ども兵も多数抱えています。民族、宗教、宗派、言語の違う、多くの戦争犠牲者たちが生活しているドホークで、PCPの目的とする活動が始まることは、非常に意義の深いことと考えています。私達はここでの活動を、「ドホークモデル」として、イラク全土に広げていきたいと考えています。
Where is Duhok? Why Duhok?
PCPは、2018年9月1日に任意団体としてスタートしました。最初に行ったのは、イラク北部クルド人自治区から、教育委員長、現地NGOの代表とマネージャー、少年刑務所の所長を招聘するプロジェクトでした。日本の図書館、少年院、教育現場での環境に関する授業、高校生たちの絵本のプレゼンテーション、小学校での演劇ワークショップの見学や参加、広島・長崎訪問と被爆者の方のお話を伺ってのディスカッションなど、内容のつまったプロジェクトからスタートしました。
2022年5月、事業拡大に伴い、一般社団法人ピースセルプロジェクトとなりました。
History
教育関係者、エイドワーカー、図書館司書、デザイナー、俳優、作家など、それぞれ異なった経験を持つスタッフと、ボランティア・スタッフ、サポート・メンバーで構成されています。
Who are we?